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2024年4月14日日曜日

Monochrome Film Workshop 写真展

会員の鈴木知之氏が講師を務めていた「Monochrome Film Workshop」の展示を拝見しました。
会場は四谷三丁目駅近くのランプ坂ギャラリー。初めて行く場所ですが、2017年頃まで「ルーニィ247」が在った場所からほど近い、小学校跡地を利用した施設です。
案内ハガキによれば、ハーフ判から4×5まで、すべてをバライタ印画紙にプリントした約50点の作品だそうです。サイズも六つ切りから全倍までと多彩です。
鈴木さんによれば、「受講生は20代、30代の人が中心で、50〜60代の昔から銀塩が好きな方、外国人も多い。」「若い方に、なぜフィルム?なぜ暗室?と聞くと、『難しいからハマる』と言われる事が多いです。スマホやデジタルが簡単過ぎて、つまらないとも。
失敗や難しいテクニックほど、面白がります。暗室で『感動した』と言われた事も。
オリジナリティにこだわる若い人の今のトレンドは、デジタルよりフィルムカメラ&暗室プリントが楽しいようです。」 ということでした。
銀塩写真もまだ存在価値はありそうなので少し安心しました。

 
校舎の面影が残る入口

鈴木さんとその作品
ギャラリーは地下にあります

会場の様子








2024年3月13日水曜日

フィリップ・サルーンの「愛おしい日常」

 目黒駅から権之助坂をだらだらと下ったところにあるJam Photo Galleryで、フィリップ・サルーン写真展を観ました。

このギャラリーを訪れるのは何と5年ぶりでした。

サルーン氏は写真家であり、プリントアーティストでもあったひとで、2020年に77歳で亡くなったそうです。2003年4月には研究会で講演会を行い、プリントアーティストとしての作品(ロベール・ドアノー、ジャック・アンリ・ラルティーグ、エドゥアール・ブーバといった写真家のプリント)や、自身の作品を多く見せてもらったことが記憶に残っています。その時の記録は会報26号に書かれています。

今回の展示は自身が撮影・プリントした作品のみで、「愛おしい日常」というタイトルにもあるように、ほほえましい一瞬をとらえた、いかにもフランス人のエスプリを感じさせるものです。

きがつくと、こういう街角のスナップショットは極めて撮りにくいご時世になってしまいました。


2024年3月1日金曜日

古谷津純一写真作品展 私風景/野田2

3月1日、昨年に続き、古谷津さんの個展を野田で拝見しました。(同じ会場で開かれたのは10年前でした。)

作者はこのところ精力的に展示を続けておられます。昨年の中野の個展はこちら

野田市駅ちかくの興風会館。昭和初期の建物で、風格を感じさせます。(電線が邪魔です・・・)
会場は地下のギャラリー。 
エボニーの8×10が睨みをきかせています。

今回は自然の風景より、「人工造形物」が中心となっています。いつもながらの古谷津節にとても刺激を受けました。
静謐な風景に動きを感じさせる切り取りも見事です。夜明け前の光と無風とを選ぶために、何回も通うという作品創りの情熱は見習わなくてはなりません。

市内には歴史的な建物も多く残っています。「旧野田商誘銀行」は、会場のすぐ近くにあり、「醤油」の語呂合わせだそうです。

2024年2月3日土曜日

ラムダバライタプリントについて

 日本写真芸術学会の「写真プリント研究会」を聴講してきました。(2024年2月3日 東京工芸大学中野キャンパス) 正式なタイトルは「デジタルモノクロ銀塩バライタプリント(通称ラムダバライタ)について」というものです。

イタリアのダースト社製ラムダプリンターは、銀塩印画紙にレーザー光線で露光するもので、カラープリントの機械だと認識していましたが、バライタ印画紙を使えばデジタル銀塩モノクロバライタプリンターとなるわけです。印画紙は50インチ幅のロールなので、この幅のプリントを作ることができます。なお、現像から定着、水洗は大きなトレーで手作業で行っています。印画紙がパンクロなので、現像は全暗黒が必要とか。

会場では広川泰士氏のTimescapesの作例などが展示され、いろいろとお話を聞くことができました。このシリーズは砂漠の岩と星の日周軌跡を捉えたものですが、一晩では露出が終わらず、翌日にかけて撮影することもあったそうです。光線漏れや蛇腹の内面反射などがあり、その補正をラムダのオペレーターに伝えるのも苦労したとか。

氏は20×24までは自分で引き伸ばせるが、それ以上はラムダで出力することになるとおっしゃっていました。

私が最も気になったのは、PCのモニターで見るデジタル画像と、ラムダで出力するプリントの調子をどのようにマッチングさせるかでしたが、オペレーターの方に質問すると試しプリントをみて調整するという、極めてまっとうなお答えでした。

50インチの巨大プリントを作る機会は私になはいと思いますが、もしそのような作品ができたら試してみたいものです。

2024年1月21日日曜日

小林紀晴著 「写真はわからない」

 

会員Hさんのお薦めで、小林紀晴著「写真はわからない」(光文社新書)という本を読みました。示唆に富んでいて、自分の写真の撮り方を見直すにためにも大変参考になります。とはいっても、写真技術のハウツーではなく、テーマの発見やその発展について、自身の写真家としての実践や教育者の経験が多面的に語られています。

本書の冒頭では森山大道を例に、なぜその写真が「有名」なのか、そして最後には杉本博司の海景がどうして評価されるのかなど、写真作品の価値についての考察がスリリングです。

私は著者についてあまり多くを知りませんでした。数年前に家の近くの「ブックオブスキュラ」という写真専門の書店で、tokyo nature photo という図録を求めたことがあるだけです。写真と見開きに配置された短文を改めてよみかえしてみると、作品創りにはコンセプトを言語化できることが大切だと思い知らされました。

2023年12月26日火曜日

「前衛」写真の精神

 「なんでもないものの変容」とサブタイトルのついた展示を観ました。(松濤美術館 2024年2月4日まで)

アジェや、シュルレアリスムから影響を受けた戦前の前衛写真をはじめとして、戦後の大辻清司、牛腸茂雄などが並んでいます。今年が生誕百年となる大辻と、その教え子である牛腸の作品がメインとなっているようです。

わざわざ「前衛」とカッコに入れたのは、とくに牛腸をそう呼ぶのに違和感があるからでしょうか。

大辻が名付けたという「コンポラ」は「プロヴォーク」と並んで1960~70年代の現象でしたが、「前衛」という戦闘的な言葉とは相いれないように思えます。

「なんでもないもの」を何でもないように表現するのは、意識的に無意識を装うような努力が必要なことなのでしょう。

ぼんやりとそんなことを考えながら美術館を出て、師走の渋谷の街を歩くと、見慣れた街がどんどん変容していく様を目の当たりにします。

2023年12月14日木曜日

第27回写真展 終了

 アイデムフォトギャラリー シリウスで開催した写真展も、12月13日にぶじ終了しました。

今年の展示では、作品のほかW会員が考案した「ビューイングフィルター」を新たに販売して好評でした。

「ビューイングフィルター」は、ゾーンシステムで大切な「ビジュアライズ(撮影するときに、プリントした写真がどのように見えるかをあらかじめ考えること)に便利な道具です。市販品はラッテン#90フィルターを使い、これを透すと実景の色彩が弱められ、白黒プリントに近いイメージで見られるというものです。しかし最近は極めて高価で入手しづらくなっていました。
Wさんの創意工夫で、安価に再現することに成功したのです。

また、昨年同様「ゾーンシステムテキスト」も好評で、用意した20冊は完売しました。

銀塩白黒写真に興味を持つ人がまだまだ健在であると実感できた1週間でした。

2023年12月9日土曜日

井津建郎 祈りのかたち

 小伝馬町 Roonee247ファインアーツで終了間際の写真展を観ました。

題材にふさわしくやわらかいトーンのプラチナプリントで、ブータンの寺や、そこで祈る子供たちを捉えています。

こちらを見つめる子供たちの表情は、日本の原風景といってもよいほど親しみがもてるものばかりでした。写真家の前でしばらく緊張し、撮り終わってからはほっとする様子が想像できるようです。

数年前に観た同じ作者の「Eternal Light」は、ゼラチンシルバープリントの深い階調で描かれた終末の物語でしたが、こちらは暖かい表現で、未来への希望が感じられる展示でした。

2023年11月22日水曜日

小川一眞と写真製版 展

 H会員の情報で、飯田橋から少し歩いたところにある印刷博物館で開催中の「明治のメディア王 小川一眞と写真製版」展を観てきました。

小川一眞(おがわ かずまさ)という明治の写真師は、明治百年記念に発行された「明治の機関車コレクション」という写真集の撮影者、というほどの知識しかありませんでした。しかしこの展示を観て写真印刷にも大きく貢献した人だ、との認識を新たにしました。

写真を複製する技術は、ネガポジによる「焼付け」から「印刷」に移ったことで桁違いの大量生産が出来るようになりましたが、その技術もコロタイプから網目印刷へと発展していきました。小川はその両方の導入に力を注いだそうです。

展示はそうした彼の作品や歴史的な成果が中心で、技術的な内容には少し物足りなさも感じました。ただ、会場の係の人に質問すると、わざわざ担当の方を呼んでいただき、より詳しい説明をしていただけました。

先日観たDNPと今回のTOPPANと、業界の二本柱が写真印刷に関わる展示を行っているのも興味深いところです。


2023年11月12日日曜日

[告知]ゾーンシステム研究会写真展および会場での撮影アクセサリ即売

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光への探求-銀塩写真の魅力-
ゾーンシステム研究会 第27回写真展

2023.12/7〜13
open 10:00〜18:00
最終日は15:00まで
日曜休館

TEL 03-3350-1211

アイデムフォトギャラリー「シリウス」
東京都新宿区新宿1-4-10アイデム本社ビル2F
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私たちは大中判カメラを使い、撮影からフィルム現像、白黒印画紙へのプリントまでの技法としてゾーンシステムを活用し、自然風景 、都市風景、静物などの美を追求しています。

ゾーンシステムを活用した撮影では光を見極めることが大事です。その際に強力な援軍になるのが古くからあるビューイング・フィルター。フレームをのぞくと原色の風景がアンバー色に変わり、色に惑わされず光のバランスを見極めできるようになります。(個人差はありますが・・)

以前は海外メーカーから市販されていたのですが、デジタル化の進展の影響か?見かけなくなって数十年。「ないなら作ってしまえ」精神+令和なテクノロジで伝統的なアクセサリを復活させてみました。
特徴は以下です。特に、3)は既存品にはない自慢ポイントになっています。

1)期限切れ未使用カラーフィルムをリユースしたエコなフィルター
2)水分厳禁なゼラチンフィルター未使用かつプラスチック製フレーム採用により、雨で濡れても乾かせば利用可能。
3)フレームフォーマットを交換可能(4x5,6x6,6x9)

写真会場で自作したビューイング・フィルターを展示・即売する予定です(*)。
是非、お手に取って効果を体感してください。

(*)会場限定価格 1セット1000円(30個限定)
    初心者の方には、同時に即売する「ゾーンシステム テキスト」もオススメします。





大辻清司 「フォトアーカイブの新たな視座」を支えた技術

 厳密にいえば写真展ではないのですが、市谷のDNPプラザで開催中の「大辻清司 「フォトアーカイブの新たな視座」を支えた技術」展を観ました。(12月15日まで)

大辻清司生誕100年を記念した展示は武蔵野美術大学美術館で行われたのですが、プリントが残されていなかった作品をオフセット印刷で新たに「プリント」したそうです。その技術を紹介しています。
オフセット印刷とはいうものの、印刷機で大量に刷るものとは違い、職人技の手作業です。インクも特別なブラックとグレーを使い、さらに表面をコーティングするので光沢感が均一になり、ほとんどゼラチンシルバープリントと区別がつかないレベルです。


刷版(さっぱん)の実物も展示してあります。

この技術を写真集などの印刷に使えないかと質問したところ、そのような予定はなく、仮にできたとしても、とんでもなく高いものになるだろうというお話でした。

また、作品の展示はフレームを使わず、マットに入れたものを壁に固定してありましたが、プリントとオーバーマットの間には低反射のシートが挟んであるそうです。そのシートも高価で、一枚分がン万円もするそうで仰天しました。

2023年11月1日水曜日

立木義浩 肖像/時

 写大ギャラリー「立木義浩 肖像/時」の最終日(11月1日)に飛び込んできました。

とくに1960年代、カメラ毎日などに発表された作品は懐かしいと同時に、今見ても古さを全く感じさせない素晴らしい作品でした。係の方に伺うと、すべて作者の手によるプリントだそうです。

会場の告知によると、本日の終了後に作者本人によるギャラリートークがあるとか。残念でしたが、後ろ髪を引かれる思いで会場を後にしました。

神田川沿いに少し歩いてGeniusでひとやすみ。道玄坂小路にあったころから変わらないスピーカから流れる音が、先ほど観た写真とオーバーラップします。


2023年10月20日金曜日

内藤明写真展 more

 ギャラリーE&M西麻布で 内藤明写真展 more を拝見しました。(11月5日まで)

いつものように?闇の中からひっそりと現れる光が、端正な横位置に統一されて描かれています。昨年から今年にかけての新作ばかりだそうです。

テクニックや機材についてはいろいろとお話を伺うのですが、目の前の光景を、まるでほかの星の景色のようにビジュアライズするその視点は、言葉で聞くより見て感ずるしかないようです。




しばらくお話をしていると、先日のPhotograpic Art Asiaにも出展されていたH氏が来場し、写真談義がつづきました。



2023年9月23日土曜日

野又穣 想像の語彙

 私の好きな画家、野又穣の個展を会期終了間近に観てきました。(東京オペラシティアートギャラリー 2023年9月24日まで)


野又の絵は精密な透視図法で描かれた、図面のような表現が特徴です。現実にはあり得ない不思議な建物が、静謐な空間に佇んでいる風景は何回観ても飽きることがありません。バベルの塔やノアの方舟をモチーフとした作品には圧倒されます。
今回の展示は、すべて撮影自由というのも驚きました。
しかしそれ以上にうれしかったのは、この世界を三次元化した建築模型が展示されていたことです。
野又の絵を初めて観た時、CGでモデル化しその中を歩き回りたいという妄想がふくらんだのですが、こうして実体となったものをみると、改めてその想いが強まりました。




2023年8月9日水曜日

PHOTOGRAPHIC ART ASIA 2023

 九州の西側にいる颱風の影響で、突然雨が降り出すという天候でしたが、半蔵門のJCIIクラブ25で開かれているフォトグラフィック アート アジア 2023 展にお邪魔しました。

会場はいままでの表参道よりすこし小さい印象ですが、かえって参加アーティストの多様な作品が凝縮して観られます。表現の内容や技法は多種多様で、身近な風景のなかで一瞬のきらめきを捉えたもの、広大な風景を緻密に表現したものなど、個性が際立つ展示となっています。写真の技術も多岐にわたっており、サイアノタイプに着色したもの、オイル印画など、ゼラチンシルバープリント以外は何でもある、という印象でした。現代では過去に蓄積された技術の中から、最も自分の表現に適したものを選べるという、かつてない豊かな時代であることを実感します。

土居氏のオイル印画は、一度や二度のお話ではとても理解しきれないプロセスでしたが、スマートフォンで撮影したデータから、やや硬質でエッジが立ったプリントをつくるという興味深い作品でした。


2023年7月19日水曜日

平塚美術館

 平塚美術館*1で「さとびとみやび 失われた理想郷を求めて」展(~9/3)*2 と
「造形作家 玉田多紀 ダンボール物語」展(~9/10)*3 が開催中です。

*1 平塚美術館はJR平塚駅からバスで数分です。小田急の伊勢原,秦野,本厚木からのバスもあるようです。(平塚以外からだと伊勢原からが便利みたいです。伊勢原から約9Kmです。降りるバス亭は運転手さんに聞いたほうがいいです。)
*2 https://www.city.hiratsuka.kanagawa.jp/art-muse/20162006_00031.html
*3 https://www.city.hiratsuka.kanagawa.jp/art-muse/20162006_00030.html

「さとびとみやび」展では濱谷浩の「裏日本」は7-8点展示されていました。濱谷浩さんは、東京の避暑地として有名だった大磯にお住まいだったんですね。初めて知りました。

藤田昭子の作品は中島先生の写真のほかにミニチュア(といっても大きい)や焼成を撮影したビデオなんかもありました。映像から多人数で焼いていく祭りのようなパワーを感じました。

同時開催の「ダンボール物語」展は巨大なダンボールでつくった生き物のファンタジー的な展示でした。小学生が目を輝かせてみてました。小中学生以下は無料なので、夏休みにお子さん、お孫さんをつれていくといいかも?

作品目録に作家の解説動画のQRコードが印刷してあり、ギャラリートークに参加できないことが多いので便利だとおもいました。

鈴木知之 MonoriuM展



ゾーンシステム研究会の会員でもある鈴木知之氏の個展 MonoriuMがギャラリーE&M西麻布で始まりました。(7月30日まで)

MonoriuMというのは、モノクロームの植物標本(Herbarium)という意味を込めた造語だそうです。

すべて縦位置に統一された、黒バックから浮き出るような植物たちの肖像が並んでいます。作者によれば、ハイコントラストとテクスチャを両立させるために粗粒子の表現を工夫したとか。

粒子の荒れ方は気に入った形になるよう、現像方法の試行錯誤を重ねた苦心の表現です。半世紀前に流行した「アレ・ブレ」などとは全く異なる表現を追求したという研究熱心に頭が下がります。

植物は、実際に生えている場所で黒バックを使い、光線状態を勘案しながら撮影したそうです。ブロスフェルトのように形の面白さを前面に出すだけでなく、生えている環境をも考慮した画面の構成になっているようでした。



2023年7月9日日曜日

写大ギャラリー 形あるもの、形なきもの

 7月8日の例会後、有志で写大ギャラリーの「形あるもの、形なきもの」展を見学しました。

東京工芸大学創立百年を記念した、卒業生の作品展示です。中島代表のプリント(Strange of Light)前では、作者による臨時のギャラリートークになりました。

また写大ギャラリー専門職員の深尾さんには展示について詳しい説明をしていただき、大へん有意義でした。入り口わきには本城直季による巨大な渋谷の写真(small planet)が掲げられ、会場に入ると田沼武能によってその60年前に撮影されたほぼ同じ場所の写真(渋谷駅前広場 1948年)が出迎えるという仕掛けです。歴史を伝える写真やコマーシャル写真などをぐるっと鑑賞すると、最後は大辻清司による実験的な作品で締めくくられます。

その後、ギャラリーの収蔵庫も見せてもらうことができました。20℃50%RHに保たれた庫内には入れませんが、無酸性ボックスに保存された膨大なプリントには圧倒されます。その庫内から展示スペースまで、外気にさらすことなく移せるという配慮も、写真プリントの貴重さを改めて認識させられました。
研究会のポートフォリオがこのコレクションに加えていただけたのは、名誉なことです。





2023年6月11日日曜日

古谷津純一写真展 『残像』 - 木々の中の散歩道 -

 6月10日の例会が終わってから、有志数人で中野のギャラリー冬青で開催中の 古谷津純一写真展『残像』- 木々の中の散歩道 - にお邪魔しました。関東が梅雨入りしてから間もない時期ですが、幸いなことに雨にはあわないで済みました。

従来、古谷津さんの写真は8×10を使い、きわめて精緻な描写をされてきましたが、今回は一転してコットン ラグベース印画紙を使い、柔らかな雰囲気になっています。

一見すると写真の教科書に載っている、スティーグリッツや福原信三などの描写をほうふつとする穏やかで情感に満ちたスナップショット風ですが、そのイメージを仕


上げるためにはまず小型カメラで撮影・現像してから改めて大判で撮るなどの周到な準備を重ねているそうです。タイトルの「残像」にはそんな意味が込めてあるというお話でした。

プリントの仕上げにも、ハイライトとシャドー部には異なった調色剤を使うスプリットトーニングを行うなど、撮影準備から機材選び、プリント作業すべてにご自分のイメージを定着するためのこだわりが詰め込まれています。

こんな写真談義をしていると本当に時を忘れます。

蛇足: 古谷津さんの地元、野田付近で売られている「焼ねぎ千葉味噌」は、ご飯が無限に食べられるという絶品です!

2023年6月3日土曜日

Monochrome Film Workshop展、「架空の街」展

未明から午前中は台風の影響で大雨となった土曜日、昼過ぎには天気も回復してきたので、写真展をふたつ観ました。どちらも地下鉄有楽町線の沿線と云える場所です。

Monochrome Film Workshop展

会員であるS氏が講師を務めている暗室ワークショップの終了展で、7名が展示しています。作風も展示方法もひとそれぞれで個性があり楽しめます。


形や動き、そして意味などの共通性によって異なるショットをペアにして展示したW.P.さんの作品は、着想とプリント技術がみごとです。

また、海外取材かと思える写真が代官山周辺の旧山手通り沿いで撮ったものと聞き、見慣れた場所に異世界?をみる、写真ならではの表現に感心しました。

初めて訪問したgallery niw は落ち着いた、よい雰囲気の会場でした。

江戸川橋から地下鉄に乗り、有楽町でおりてすこし歩きます。

鈴木彩百写真展 架空の街

たまたま手にしたDMの写真が造形的で興味をそそられたこともあり、足を伸ばしてみました。タイトルも謎めいています。作者のおなまえは「あやも」と読むそうです。 

都市のデザインを、主に仰角できっぱりとパースをつけ、コントラスト高目な白黒写真に仕上げてあります。

会場は老舗の画材店 月光荘の地下ですが、狭いのと観客が多いこともあってゆっくりお話をきくことが出来ず残念でした。